床下に眠る愛情

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私はこのお金を持って、銀行に行った。 新規に口座を作り、祖母の言葉通り、必要なときに使おうと思った。 必要にならなければ、私の子の代に引き継げばいいだろう。 あのまま床下に放置しておいたら、朽ち果ててしまうだけだ。 通帳を見ると、一億円を超えていた。 その金額なんて問題がないほど、私は愛されていたと改めて思った。 月日は流れた。 私は結婚することなく、定年を迎えた。 祖母のお金は手付かずだ。 必要な時がなかった。 働いていた方がよかったので、パートの職を探した。 就職難のこのご時勢に、パートはすぐに見つかった。 スーパーの品出しの仕事であった。 私はそれほど体力に自信はなかったが、しばらくすると、身体が慣れていた。 そんなある日、不審な姉妹を見つけた。 12歳と10歳くらいだろうか。 すぐに警備に知らせた。 そのあとはどうなったのか私にはわからない。 数日が過ぎ、スーパーからの帰宅途中に、私が警備に知らせた姉妹が目に入った。 特に何もしているわけではない。 児童公園で、ベンチに座っているだけの子なんて、私はあまり見た覚えがなかった。 それに、昼間であれば気にも留めなかったかもしれない。 しかし今は午後9時過ぎ。 あの子供たちが出歩く時間ではないと思った。 交番に届けようかと思ったが、私は少し話をしてみたいと思った。 私は不審者と思われないように、極力その姉妹から離れ、しゃがんで話をした。 「お譲ちゃんたち、家に帰らないの」 姉妹とも話す気はないのだろう。 首をこくんと下げただけだ。 「お家の人、心配しているんじゃないのかな?」 今度は首を横に振った。 「叔父さんに帰りたくない理由を教えてくれないかな?」 姉妹とも、泣き出してしまった。 ゆっくりと話を聞いた。 この子達は、施設に預けられた孤児だった。 孤児院の中でも、イジメはあるようだ。 子供同士ならわからない話しではないが、先生とこの子達が呼んでいる者が憂さ晴らしのようにしているらしい。 第三者に介入してもらった方がいいと判断し、私はこの子達を警察に連れて行った。 警察から児童相談所に無理やり電話をさせた。 その方が説得力があるからだ。
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