床下に眠る愛情

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床下に眠る愛情

祖母が亡くなった。 私を女手ひとつで育ててくれた。 私の両親は、私が幼いころに交通事故で亡くなっている。 身よりは祖父のところだけだった。 祖父は、私を快く育ててくれた。 まだ私が小学校のころに、祖父は痴呆症にかかってしまった。 祖母は、祖父のために献身した。 しかも、私の躾も怠らずに、よく面倒を見てくれた。 それから祖父は、静かに息を引き取った。 それからの生活は貧しかった。 でも、暖かいこの家が好きだった。 私も成人式を向かえ、あと一年弱で卒業、就職も内定が取れている。 そんな矢先、祖母が倒れてしまった。 これから祖母に恩返しをしようとしていた矢先に、こんなことになるなんて。 祖母はあっけなく逝ってしまった。 私は悔しかった。 私ひとりになってしまった家。 今までこんなに広かったのか。 ひとりだと、同じ家でも別のもののように思える。 そんな折、なぜか大掃除をしようと思った。 本当はしたくはなかった。 まだ、祖母のにおいを感じる気がする。 仏壇の間の畳をあけたところ、なにやら箱のようなものがあった。 (なんだろう?) 引っ張り上げ、ダンボールを開いた。 その中には、ビニール袋に入れられた紙幣がたくさん入っていた。 こんなに金があるのなら、なぜあんなに苦しい生活をしていたのかわからなかった。 それに、祖母が倒れたとき、このお金のことを言ってくれたら、倒れる前に病院に行ってくれていたら。 そう思うと、胸が張り裂けそうになる。 私は祖母を思い、再び涙を流した。 そのビニール袋の中に、封筒が入っていた。 封を切って、便箋を取り出した。 (お金は汚いもの、でも必要なもの。彼方の好きに使いなさい) 祖母の最後の言葉になった。
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