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「相変わらず、ズルい身体だな」
少し乱れた呼吸で、拓人は呟いた。
「……嫌いなの?」
「すげぇ、好き」
頬がカッと熱くなった。
不意打ちにも程がある。
だって、言った瞬間の拓人の顔が、すごく幸せそうで、言葉以上の想いを感じ取ってしまったのだから。
次第に激しさを増す揺れと、気まぐれに降ってくるキス。
溺れて、我を忘れそうになる度に、絶妙なタイミングで宥めてくる熱い手。
蕩けた私の身体は、このまま拓人に吸収されてしまうかもしれない。
溶け出してしまいそうな精神は拓人から逃げる手段を持たず、ただひたすら、喘ぐしかなかった。
この日、拓人が何度欲を吐き出したか、私は知らない。
私が何度絶頂を迎えたかも分からない。
遠くなる私の意識を、拓人は実に巧みに引き寄せ、宣言通り、私たちは朝まで抱き合った。
「栞奈、朝食の時間らしい」
「無理に決まってるでしょ!?」
楽しみにしていた朝食を食べ損なったことだけは、少しだけ悔しい。
こうして、私たちは(遅れてやってきた)新婚初夜の妖艶な魔力に屈服したのであった。
終
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