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拓人は私の返事にふわっと笑顔になって応えると、また私の手を取って歩き始めた。
手を繋ぐなんてこの歳で恥ずかしいけど、悪くはないし、機嫌が良さそうな拓人も悪くはない。
どこに行くのかと思ったら、一度車で移動してブランドショップが並ぶ場所に連れてこられた。
マンションにある服で好きなブランドは知っていたけど、大してブランドに興味のない私にはこの一帯は初めて来るところだ。
拓人は迷うことなく、一軒のブランドショップに入った。
私はそんな堂々とした拓人の半歩後ろを、若干気後れしそうになりながらも、冷静を装って着いて行く。
「成瀬様、いらっしゃいませ」
上品なスーツを着こなした女性が、綺麗なお辞儀をして拓人に挨拶をした。
他の店員さんも同じように拓人に向かって頭を下げたことで、必然的に隣にいた私まで挨拶されたような状態になり、ビクッと身体が固まってしまった。
まさかの常連だ。
しかも、名前を覚えてもらうほどって、どのくらい上客なのだろうか。
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