拓人、栞奈を甘やかしてみる。

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「本日はどのようなものをお求めでしょうか?」 店員さんの一人がこちらに近寄り、笑顔で話しかけてきた。 それを受けて、拓人は繋いでいた私の手を引き寄せたため、油断していた私の身体はあっという間に拓人の身体に密着してしまい、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。 「こいつに似合うワンピースを何着か見繕ってくれ」 「畏まりました」 はい? 店員さんが頭を下げて離れたのをぼんやりと眺めながら、拓人が言ったことを理解しようと試みた。 「えっと……拓人の服を見に来たのよね?」 「俺のも買うけど、まずはお前から」 何を、言ってるの? 「私、こんなにすごいブランドの服買えないわよ?」 「なんで、お前が買うんだよ。俺が買うに決まってるだろ」 拓人は、何、当たり前のこと言ってんだよ、という呆れにも似た目で私のことを見てくる。 「買ってもらう理由なんて……」 「俺が買いたいんだから、大人しく選べ」 どうして拓人が私の服を買いたいの? 未だ戸惑いから抜け出せない私を他所に、先程服を探しに行った店員さんが三着持って戻って来てしまった。 こちらは如何でしょうか、と言って見せられたのは、どれも上品で大人っぽさの中に可愛さも感じられるような雰囲気のものばかりだ。
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