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それから、一着着ては試着室から出て、拓人と店員さんにチェックされるということを繰り返した。
私が見せる度に店員さんは褒めてくれるが、拓人は腕を組んで無言で眺めるだけ。
拓人は褒めるタイプではないと分かっていても、何も言われないのはどうしても不安になってしまう。
三着目にダークグリーンのワンピースを着て出た時に、ようやく拓人が口を開いた。
「栞奈はどれがいい?」
「えぇ? どれもかわいいから……でも、一番好きだなと思ったのは、このダークグリーンのワンピかしら」
私がそう言うと、拓人は少しだけ口角を上げて、顎に右手を当てた。
「俺もそれが一番栞奈に似合ってると思う。気が合うな。それでよければ、そのワンピースに決めるか?」
うそ……拓人が、似合ってるって言った!?
「こんなかわいい服、私らしくないんじゃない?」
こういう服は、もっと女の子らしくて、ふわふわした雰囲気の子が着るものだ。
どう見ても、私には浮いているように思えてしまう。
どうしても選ばないといけないなら、この服だけど。
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