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二人で書店を出て、少し街を散策することにした。
今日は暑いが曇っていて、直射日光は避けることができている。
それでも、少し歩けば汗が滲んでくるが。
「なんか、欲しいものでもあるのか?」
「えっ、ないわ! 何もないの! 何かを欲しいと思って迷うこともないから。拓人こそ、何か欲しいものあるの?」
何気なく聞いたことに、栞奈は必要以上に慌てて否定した。
なんとなく顔が引きつっているようにも見える。
何か慌てるようなことを聞いただろうかと考えてみても、思い当たることはなくて釈然としない。
そんな些細なことにまで引っ掛かるなんて、やっぱり俺はおかしいのかもしれない。
特に欲しいものもないのなら仕方がないということで、栞奈の好きなパティスリーにケーキを食べに行くことした。
俺は甘い物に目がないが、女ばかりの店に一人で食べに行けるほどの勇気はない。
今までは女が買って来てくれたり、職場で差し入れとしてもらったりした程度だ。
店をよく知っている栞奈と付き合うようになってから、確実に食べる機会は増えた。
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