あすなと佑都

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……なのに。 みるみる曇っていくあすなの表情。 「あす……な?」 声をかけると何故か首を横に振りながらぺたんと膝をつく。 そして……泣き始めた。 「あすな?あすな……どうした?」 困惑しつつも駆け寄る。 どんなに声をかけても首を振り続けるだけ。 喋る事が出来ないのだから仕方ないのは分かっていた。 でも答えもない、訳のわからないこの状況に少し苛立ちを覚える。 ――5分ほどそうしていただろうか。 あすなが泣きやみ落ち着きを取り戻した所でまた繰り返し訊いた。 「……東京、一緒に来てくれないかな?」 するとあすなはズボンのポケットに入っていたスマホを取り出して、カチカチ 文字を打つ。 【お兄ちゃん。本当にごめんなさい。私はここを離れたくない】 一緒に来てくれるという返事を期待してただけに見た瞬間に軽くめまいにも似た感覚に襲われた。
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