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次の日の葬儀の準備やらで、俺は悲しむ暇もなかった。
いや、悲しむ暇も作りたくなかったのかも知れない。
―――あすなに悲しむ姿を見せられない。凛とした兄でありたい。
その想いで俺は何とか前に進めたんだ。
それに葬儀に来てくれた皆はあすなを心配する。
口が訊けないことを知ると、大袈裟に言うんだ。
「可哀想にねぇ」
まるで、悲劇の少女だと言わんばかりに。
そして決まってあすなに聞こえないように俺に言うのだ。
「大変だね」
可哀想?大変だね?
何でお前らにその価値観を押し付けるられなければならないだ。
俺は別に大変じゃない。
それに、あすなもお前らから上から哀れるほど可哀想でもないと思う。
可哀想だろうが、大変だろうが俺たちは生きていかなければならないのに。
無責任な言葉。
……俺は正直、苛立ちを隠せなかった。
周りの雑音がうるさい。
そんな事が、暫く続いて。
両親を亡くした悲しみよりも周りに対する自信暗鬼が生まれてきそうだった。
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