きらぼし

10/32
前へ
/32ページ
次へ
「そもそも、ゼロカじゃない。レイカだ。霊とか、科学じゃやっつけられない仕事をかたしていく部署、それが、零課だ。霊って字をあてると、科学捜査を売りにしてる警察としては、許せなかったんだろうな。上のやつらは、そういうとこお堅いからな」 「はあ…」  いまいち分からないというように梓が相槌をうつと、杉浦が言葉を続ける。 「刑事課では、遺留品から犯人をみつけたりするが、ここ零課では、死者の残したメッセージ、残留思念などが事件解決のヒントになったりするから、俺は、この課の捜査スタイルを、"残留捜査"と呼んでいる。まあ、余談だがな」  そう言って杉浦は、ふ、と息をもらして笑む。  何が面白いのか、と思いながら、梓は、はあ、と適当に相槌をうつ。 「だが、基本は体を使う仕事だ。というわけで、あんたに仕事をやる。星華高校に潜入しろ」 「はあ?」  梓が杉浦の意図するところが分からずに疑問の声をあげると、杉浦はいまいましげに顔を歪めて補足する。 「女子高生に化けて潜入捜査しろと言っているんだ」 「何言ってるんですか。私、もう24ですよ?無理ありすぎです」 「大丈夫だ。小学生でもいける」 「それってどういう…」  梓が言い終わらないうちに、杉浦は、近くに置かれた段ボールの中から星華高校の制服を取り出し、梓におしつけるようにした。  梓が反射的にそれを受け取ると、杉浦は、仕事内容について語りだした。 「編入するための手続きはもうすんでいる。冬休み明けから登校することになっているから、それを着て登校しろ。それまでは有休をやるから、役作りを十分にしろ。本木司という名で申請してある。へまはするなよ」 「はああ?」  梓が呆れていると、杉浦は再び煙草をふかしてほうけだした。そして目をあけたままいびきをかきはじめる。 「ちょっと、何なんですか」  そう言って梓は杉浦をねめつけるようにしたが、反応はなかった。杉浦の目の前で手を振ってみたりしたが、それでも反応がない。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加