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「仕事中に寝るって…仕事をなめすぎよ。たばこを吸いながら目をあけたまま寝るなんて、すべてにおいて変わりものね。にしても、いかにすべきか…」
そう言って梓は長椅子に座りこんでため息をつく。
しかし、ここはポジティブな梓。この歳で女子高生を演じるという普通ならありえない状況に、わくわくさえ覚えていた。
もう一度青春を味わえるかも、とわくわくしながら、梓は制服をぎゅうと抱きしめて、一人テンション高めに小躍りした。
しかし役作りをすること十数日、冬休み明け、いきようようと登校した梓は、すぐにその考えが甘い幻想だと知った。
梓の潜入した星華高校一学年一組は、それはひどいありさまだった。半数近くの席が空席、来ている生徒は茶髪金髪ピアス、授業中はケータイいじりやメイクなおし、私語罵詈罵声…。
現代の抱える問題に改めて直面した梓は、教室のすみでひとり小さくなっていた。
潜入一日目を終えた梓は、その足で杉浦に報告を行うため、零課におもむく。
「どうだ?成果のほどは?」
杉浦がシャレのつもりで言ったのか、そんな軽い言い方をしたので、梓は、むっとしながら杉浦にその日のことを報告した。
「そうか。一年生はそんなにひどい有様なのか。それを学校がどうやって修正していくのか…。まあ、引き続き頼むよ」
他人事だと思って、と梓がぐだっといつもの長椅子に座っていると、杉浦が部屋の入口に近い場所にある机を指さして、そこがあんたの机だ、自由に使え、とそっけなく言った。そして、今日は帰っていいぞ、と言ってたばこをふかしてほうけだした。
梓は、杉浦をいまいましげにみやると、お先に失礼します、と怒鳴るように言って帰宅した。
しばらくはそんな毎日が続いたが、それでも、二週間ほどすると、学校の決まりや生徒たちのひととなりなどが見えてきて、疲れを抱かない法などもみいだすことができた。
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