きらぼし

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 星華高校には問題のある生徒に対する指導などに独自の制度があって、生徒たちはそれに従って生活している。中でも特殊なのが、グリーンカード制度だ。  心のケアが必要な生徒には、グリーンカードと呼ばれるカードが渡され、それが発行された生徒は、カウンセリングを数回にわたって行い、問題の解決をはかる。さらに、グリーンカードの発行数が四枚になると、癒しのプログラムと称し、提携している心療内科への入院や投薬治療などがおこなわれる。いずれも保護者の希望を聞きながら行われる処置であり、その協力なしに更正や心の病の完治はないという理念が貫かれている。  素行の悪い一年生は、すぐにグリーンカードが四枚になってしまい、治療のために教室をあけるものが多数でるが、皆善い生徒となってもどってくるとの話を二年生から聞いた梓は、グリーンカードの存在と、二年生の話の内容を杉浦に報告した。 「グリーンカードか…。おかしな制度だな。素行の悪い生徒が、皆そろっていい子ちゃんになって帰ってくるなんて、そんな術があるなら、どこの学校でもやっているはずだ。学校が本当に子供たちの未来を思っているなら、その術を公開して、世に広めようとするはずだ。それがどうもひっかかる。素行の悪い生徒の入院先である病院の状況を知りたい。お前、悪さをして、病院おくりになれ」 「はあ?あなた、正気で言っているんですか?」  杉浦のとんでもない要求に梓がいきりたってそう言うと、杉浦はそれを気にもとめない様子でたばこをふかし、新聞を読み耽りはじめた。 「ちょっと!あの!」  しかし、杉浦の返事はない。 「わかりましたよ、やればいいんでしょ!ずっといい子ちゃんだった私には重い役目ですけど!」  そう言ってぷりぷりと警察署を出た梓は、とりあえず自宅へ帰った。
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