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「よくある話だ。いじめってやつだ。格下の人間に万引きさせたもんをぶんだくったり、恐喝したり。いつの時代も、お決まりのように、そういうことをする人間、餌食にされる人間がいる。餌食にされた人間の末路は、ひどいもんだ。下手すりゃ命を捨てさせられる。でもな、そうしたら、やつらは、また次の標的をさだめて寄生し、すべてをむさぼりつくす。やつらを何とかしないことには、その繰り返しだ」
「え、じゃあ、あの子たちを逃がしちゃだめじゃないですか」
男の言葉を切って梓が叫ぶように言う。
「大丈夫だ。よっぽどの玉じゃない限り、二度と同じことはしない。彼女が、させないさ」
「彼女?だれのことです?」
「君、心当たりあるね?今回は彼女が君を助けてくれたんだ」
梓の言葉を無視して、男がそう言いながら少女をじっとみつめる。
「はい…」
「だから、彼女って?」
梓が負けじと口をはさむと、男は、いまいましげにその顔をみやりながら言う。
「話が通じるやつをよこせと上に言ったんだがな。まさか、みえもきこえもしないとは」
「はあ?それはどういう…」
「彼女というのは、この子の前に標的にされた子のことだ」
「その子が何なんですか?」
梓がわからないというように眉間にしわをよせて言う。
「その子は、もう死んでる。自殺したんだ。やつらの仕打ちに堪えきれずにな」
「それって…」
言いかけて、梓は、言葉をのみこむ。
「やつら、何かに怯えていたろう。その対象が、"彼女"だ。つまり、やつらは、自分たちが死においやった人間にご対面して、それで、一目散に逃げたというわけだ」
「そんなこと、有り得ない…あなた、頭、大丈夫?」
「お前こそ大丈夫か?」
男はそう言って自分の頭のわきで人差し指をたててくるくるとまわしてみせた。
「はああ?」
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