夜の足音

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渇望 外界に繋がる窓を いまはまだ開けたくなくて ただひたすら じっと 静かな闇の中に 身を沈めて 息を殺す もうすでに空は明るく 夜は明けているのに その明るさに 眩しさに 己の暗さに 何度も何度も 躊躇する きっと まだ宝物を失う覚悟が できていないから 怖いんだ まだ 事実を知るのが 手元にあるものはもうないって 認めることが怖い 見えなくて不確かで わかりにくいもの 自分だけでは得られないもの たくさんたくさんもらってきたけど 君に何か返せたのかな よかったと笑ってもらえたのかな いまはただ 知るすべもなく すべてを想像にかえて 希望を握りしめながら 必死に窓に手をかける もうすぐ もうすこし あの空まで 届かなくとも 必死に手を伸ばす 胸が痛くなるほどの 青空に
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