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「ヤバイヤバイ、冗談じゃないわよ。あのオヤジ。嫁と鉢合わせとか、マジあり得ないんですけど。
痛くない腹をさぐられるところだったわ。あんなキモいオヤジと何かあるって思われるだけでも怖気が立つわあ」
綾香は、そう言いながら、自分のスマホを出し、ある番号に電話した。
「あ、ハヤト??今からお店行くからあ。こないだスケベエ部長から贈られた、エルメスのバッグ。思わぬほど高額で売れちゃってさあ。だからあ、今日は、ドンペリ入れちゃう!」
足取りも軽く、綾香はホストクラブへと向かった。
「モフ子、モフ子ぉ?」
翔太は泣いていた。
モフ子と逃げる途中、モフ子は谷底深く滑り落ちてしまったのだ。
子供の翔太の力では、モフ子を助けることはできない。
モフ子はピクリとも動かなかった。
たぶん死んでいるんだろう。
まあ、でも、モフ子はどうせ死ぬ運命だったんだ。
僕が悪いんじゃない。
僕のせいじゃないんだ。
はあ、ご飯食べてないから、お腹すいたなあ。
ごめんね、モフ子。
さよなら。
あくびを噛み殺しながら、その様子を上から見ている者達がいた。
「内紛やらでキナ臭くなってきましたねえ。個体がどんどん移動しているし、今にも戦争が起こりそうな雰囲気ですねえ。そろそろ収穫の時期なんじゃないの?」
「そうねえ。自滅する前に収穫しないと。種を蒔いておけば、勝手に自分達で自給自足してくれる食料なんて、夢のような話だったんですけど、今となっては当たり前の時代ですもんね。こいつらの時の概念では2000年経ってるわけだけど、我々の概念では1年だからそろそろ収穫時かもね。」
「もう少し数が増えるかと思ったんだけど、もう増えそうにないしね。こいつらは、自分らが食料だという自覚は一切無いからね。俺らの食用クローンが勝手に社会を作ってるわけですよ。まさか、収穫して食べられるために生きてるなんて、夢にも思っていないんでしょうねえ。このクズどもは。」
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