第1章

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その時、携帯の着信音が派手に響いた。 や、やば。マナーモードにするの忘れてた... 閑散とした屋敷で、突然響いた着信。急いで消したけど気付かないはずなかった。 「誰かいるの?」 とげとげしい桐谷の声が耳に届く。 「ハヅキは待ってろ」 今度は男の声...。 ハヅキっていうのが桐谷の本当の名前...って、そうじゃない。 絶体絶命の大ピンチだよ! 彼はじわりじわりとこちらに近づいて来る...。 わたし、殺されるのかな? 最期だと思うと、思い出すのは倉田さんの笑顔......。 いくら彼氏がいないからって、悲しすぎるよ。 足音が大きくなっていく。 バクバクと心臓の音が響いて、そして... 「おい!誰だよ、お前ら!」 いえ、あのわたしはただの通行人でして、って... 今、お前らって言ったよね? わたしはバッと立ち上がった。 男が見ていたのは、わたしなんかじゃなくて... 「く、倉田さん?!」 先頭にいる倉田さんが、後ろに警官を連れ、立っていたの。 「ど、どうしてここに...」 倉田さんはこちらを一瞥すると、ニッと不敵な笑みをうかべた。 「電話は出なきゃダメだよ。夏樹ちゃん」 「あ...」 じゃあさっきの電話は倉田さん... わたしは警官の所へ駆け寄った。 「観念するんだな、橋本弘」 彼は目を大きく見開いいた。 「簡単だよ。夏樹ちゃんに教えてもらったナンバーで、レンタカー会社に問い合わせたんだ」 レ、レンタカー? ざわざわしているのを見つけたのか、今度は桐谷がやってきた。 「銀行強盗はうまくいったが、ここ数日で豪遊をしすぎだ。むしろ怪しいよ」 桐谷の顔がみるみる青ざめていった。 銀行強盗。 それが彼らの姿か... 「橋本さん。桐谷さんは、あなたを殺したかったそうですよ」 倉田さんはにっこりと笑う。 「ハヅキ、てめえ、ほんとか!?」 「そうですよね、桐谷華さん...いえ、草津葉月さん」 草津葉月は、その場に崩れ落ちた。 「もう無理よ。あなたとはやっていられなかったの...!」 「ハヅキ...」 「あなたはいつも自分勝手。盗んだお金だって、三分の二以上を持っていったじゃない」 「あれは、俺の完璧な計画のおかげで得たお金であって...」
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