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しばらくして桐谷さんは一枚の写真を取り出した。
思った通り、そこに写っていたのは若い男性。海をバッグにカメラに向けて、屈託のない笑みを浮かべている。
一見浮気するような人には見えないのだが……。
「この人を、殺してほしいんですの」
なるほど、殺してほしいのか……って!
「ちょ、桐谷さん?!」
「分かりました」
「って倉田さん?!」
分かりました?
ちょ、普通の浮気調査じゃないんだよ?
うち、一応探偵事務所なんですが……
「ちょっと待ってくださいよ、桐谷さん、倉田さん!!」
二人は突然声を張り上げたわたしを「何か?」という表情で見返す。
「そんな依頼、受けられるわけありません!!」
バン!と机をたたくと、倉田さんのコーヒーが倒れた。
「失敬」と何事もなかったかのようにこぼれたコーヒーを拭いている。
それを見ていると、驚きを超えて、イライラが湧き出てきた。
「まぁまぁ夏樹ちゃん。話だけでも聞いてみよう」
あぁ、彼女も、この人もどうかしてるんだ。
抵抗するだけ無駄。
話だけ聞いて、断ればいいんだ。
「……」
わたしはおとなしく、ソファーに座りなおした。
「それで、桐谷さん。どうしてその男を殺したいのですか?」
「えぇ、実は……」
彼女はゆっくりと、探偵事務所に依頼してきた経緯について話し始めた…
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