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わたしの反対意見はむなしくかき消された。
数の暴力だ……。
正義はどこへ消えたんだか……。
「ちょっと、倉田さん本気ですか!?」
依頼人の桐谷さんが帰ったあと、わたしは倉田さんに詰め寄った。
いくらうちの経営が困難だからって、お金に目がくらむなんて……。
「夏樹ちゃん、急いで彼女を尾行するんだ」
「は?」
倉田さんの表情は真剣そのものだった。
ついさっきまで、にこやかだったのが嘘みたいに、険しい顔。
「すべて嘘だよ。よくもあんな作り話ができたものだ」
「え」
「僕と彼女、どちらが信用できると思う?」
わたしは倉田さんの目をじっと見る。
倉田さんは他人の嘘を百パーで見抜ける。
どんな小さな嘘でも、倉田さんにかかれば一目でばれる。
「わかりました…」
わたしはしぶしぶ立ち上がった。
高く結んだ髪をおろし、麦藁帽を被る。
これだけでも変装には十分だ。
「行ってきますね」
わたしはバッグに物を詰め込み、急いで事務所を飛び出した……。
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