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よく考えてみれば、おかしなところは何度もあった。
わざわざ白金から離れたこの事務所に来た点。
重いのに一億円を現金で持ってきた点。
なんでもっと早く気付かなかったんだろう……。
階段を駆け下りて、辺りを見渡す。
彼女の姿はどこにもなかった。
「くっ……」
右か、左か迷っていると、携帯から着信音が響いた。
『もしもし、夏樹ちゃん?』
「倉田さん……」
『桐谷は右に曲がったよ。駅の方に向かったはずだ』
「はい!」
スニーカーを履いているから、ダッシュなんて朝飯前。
そういえば、お昼まだ食べてないなって、思いながら、駅へとかけていく。
ウソつくなんて許さない……。
尾行なんかじゃなくて、捕まえて一発殴ってやりたいほどだ。
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