29人が本棚に入れています
本棚に追加
『………い、………ろ………!』
まどろみの世界に声が聞こえる。
あれ?お母さん帰ってきたのかな?
でも、お母さんにしては声が低いし父さん?
でも、確か今日から父さん出張で母さんは、ばーちゃんの所に泊まりにいったはず………
………じゃあ、誰?
『いい加減起きろ!』
ハッキリと聞こえた声に慌てて身体を起こす。
部屋の中は薄暗くなっていて窓の外は夕陽が沈みかけておりだんだんと夜の色へと変わっていた。
そうか、私帰ってきてからそのまま寝ちゃったんだ。
グッと背伸びをすればパキパキと骨の鳴る音が聞こえ、あんなに重たかったはずの身体が軽くなっていくのを感じる。
『ようやく起きたか』
「誰!?」
再び聞こえた声に左右を見るが誰もいない。
ま、まさか幽霊じゃ………!?
『下を見ろ』
声の言うとおりに恐る恐る下を見ればそこには変わったぬいぐるみのようなものが立っていた。
青い身体に出足は黒、それを覆うように白い装甲のようなものが肘や膝などにつけられていて胸元の装甲には金のラインでライオンのような模様が描かれている。
頭の部分は顔に当たる部分が青、それをライオンが咆哮しているかのような牙や目のようなものが白や金で出来たマスクで覆われておりまるでどこぞのヒーロー番組に出てきそうな出で立ちをしていた。
ま、まさかこのぬいぐるみが喋ってるのか!?とマジマジ見つめているとぬぐるみヒーローは腕組みをするなり溜息を吐いた。
『ふう、流石にシンクロ後で疲労したとはいえ少し寝すぎだぞ』
「あ、すんません………」
『大体年頃の娘が制服も脱がずに寝るな!皺くちゃになるだろう!せめてブレザーくらいは脱げ!アイロンがけをする身にもなってみろ!』
オ、オカン………!?
このヒーローもしかしてオカン属性なの!?
シワ一つなくハンガーにかけられたブレザーを見て思わず礼を言えば、ぬいぐるみヒーローは説教を止めて私の膝へと飛び乗った。
最初のコメントを投稿しよう!