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「ダーリン!はい、あーん」
「あーん」
バカップルというのは人目を気にしない。
例え公共の場だろうと、すぐに二人の世界に入ってしまうのだ。そう………それが皆がお昼を食べているカフェテリアでもな!!!
見ろ、あのバカップルの周りだけ人がいない光景を。
そしてバカップルがカフェテリアに来た日は、調理員さん曰く異様に塩気の多い料理の注文が多くてデザートを頼む人が少ないんだとか。
「うわーすごいね、風間先輩と宮地先輩」
「見てるだけで胃もたれしそう………」
今日は朝といい昼といいバカップルに遭遇してばっかりだなと少々げんなりする。いや、2回しか会ってないけどさ。
だけど、2回もバカップルに会えば精神的に色々と削られるんだよねー………現に今にも具現化しかけているレオライザーですら心なしかゲンナリしてるっぽいし。
「由花ー頼んでた唐揚げ丼持ってきたよ」
「ありがと、はい飲み物」
友人に飲み物を渡して注文していた唐揚げ丼を受け取る。一口頬張り口に広がる肉汁とご飯を楽しんでいると、またしても耳にバカップルの声が飛び込んだ。
「じゃあハニー、飲み物取ってくるね」
「早く帰ってきてね、ダーリン!」
早く帰ってきてねって………自販機の距離ってそんなに遠くないはずなんだけどなーと思いながら唐揚げ丼を頬張っていると急に周りがざわつき始めた。
「え、何?」
「風間先輩が副会長の雪野さんにぶつかったのよ!ヤバイワヨカザマセンパイ………」
何故片言になる友人よとツッコミを入れたかったが、グッとこらえて皆の視線の先を見れば青ざめている風間先輩と無言で立っている生徒会副会長雪野香澄がいた。
「す、すみません副会長………!」
「別に謝る必要なんてないわ、それよりも………そこ通してもらえるかしら?」
「は、はい!」
慌てて退く風間先輩と、その横を通り過ぎる雪野香澄。
未だに固まっている風間先輩に宮地先輩が動き身体を揺すった。
「ダーリン、ねぇダーリン!」
「雪野香澄………」
惚けたような表情で雪野香澄が通った先をじっと見つめる風間先輩。
宮地先輩が何度声をかけても、しばらくの間そこから動くことはなかったのだった。
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