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場所はまたま移って再び土手へ。
「無い、無いよ……」
「場所はここで間違いねえよな」
「俺とヒロが転がり落ちた跡があるから、間違いねえよ」
「でも、無いじゃん!!
サトル、どこに置いたの!?」
「え、ええと、この辺……」
「改めて考えると、一億円ってとんでもねえよな」
「うん、私たち、なんであんな軽く扱ってたんだろ……」
「青春は、一億円より重いんだよ……」
「なんだよそれ、黙って探せよ張本人」
「なんだよ、俺だけのせいにすんなよ!!
そもそも、教室に置きっぱなしにしてたのお前らだろ!!」
「いいから探せって!!
一億円だぞ!!」
「やっぱり、もう誰かに拾われちゃったかな……」
「とりあえず、警察、行く?」
「……いや、もういいよ」
雨の止んだ空を見上げ、ケンジが言った。
「もういいよ、諦めよう」
「諦めようってお前、バカか!!
一億円だぞ!!」
「こんだけ探して無いんだから、もう無いだろ」
「そりゃそうだけど……」
「ごめん、私が飛び出したりしたから……」
「誰も悪くねえよ
俺たちの仲が壊れなかったんだから、それだけでいいじゃねえか」
「…………」
笑うケンジ。
うつむく4人。
「……あ、あの」
口を開いたのは、サトルだ。
「これ……」
そう言って、サトルがブレザーの内ポケットから出したのは、帯のかかった一つの札束だった。
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