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「これって…100万!?
なんでポケットに持ってんだよ」
「いや、あの、ちょっと借りようと思って、これだけポケットに入れてたんだけど……」
「借りようとって、それ、泥棒じゃ……」
「いや、ちゃんと死ぬ気でバイトして返すつもりだよ!!」
「そんなの口ではどうとでも言えるだろ!!
盗むつもりだったんじゃないのか!!」
「おい、やめろってヒロ!!
サトルはそんな奴じゃねえよ、お前だって知ってるだろ!!」
ケンジはサトルの差し出した100万円を受け取り、それとサトルを交互に見る。
「なんか、理由があるんだろ?」
「……うん」
サトルは小さく頷き、話す。
「俺、この前、原付で事故っちまってさ
まあ単独の物損事故だったんだけど、ぶつかったのが駐車されてた高級車でさ……
修理代、すげえ額請求されちゃって……」
「……いくらだよ」
「99万円……」
「なんだよそれ、ほとんど詐欺みてえじゃん!!」
「でも、俺が勝手にぶつかった事故だしさ
うち、母子家庭だから母ちゃんにそんなこと言えなくてさ
そんで今日、みんなに金を貸してくれって、話そうと思ってたのよ」
「…………」
「ケンジが一億の話した時、俺、正直助かったって思ったんだ
んで、どさくさに紛れて100万も……ごめん!!」
言って、サトルはその場で土下座をした。
「ほんっとに、ごめん!!」
頭を地面に強くつけ、叫ぶように謝る。
「でも、返そうと思ってたのはほんとなんだ!!
ただ、今すぐ必要だったから……」
「わかってるよ」
ケンジはサトルの前にしゃがむ。
「土下座とか、やめろよ
俺ら親友だろ?」
「うう、ごめん…ごめん……」
サトルは泣いていた。
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