みんなに話さなきゃならないことがあるんだ

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「ははっ、何泣いてんだよ、お前、そんな奴じゃないだろ」 「だって俺、情けなくて…恥ずかしくて……」 「ほら、もういいから顔上げろって」 ケンジはサトルの腕を引き、立ち上がらせる。 「お前のおかげで、100万は無事だったんだからさ」 言いながら、ケンジは札束から1万円を抜き、残りの99万円をサトルに渡す。 「ほら、これで修理代払っちまえ」 「い、いいのか?」 「いいよ、もう一億無くしてんだから」 笑いながら、ケンジは言った。 「よく笑ってられるね、ケンジ……」 「いや、もともとさ、あの一億も綺麗な金じゃないんだよ 爺ちゃん、そういう人だったからさ だから、これでいいんだよ」 「ありがとう、本当にありがとう!! 絶対に返すから!!死ぬ気でバイトして返すから!!」 サトルは涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら何度もケンジに頭を下げた。 雨は完全に止み、雲の切れ間から顔を出した夕陽が5人を照らす。 「一億円が一万円になっちまったな」 「いいんだよ、これで 俺にはユカとミユキとヒロとサトルがいる それだけで十分だ」 「どこまでお人好しなんだか」 言って、ユカがケンジの手を取る。 「でも、そういうところが好きよ」 「ひゅー、見せつけてくれるねえ」 「失恋したばっかりの私の前で、どんな神経してんのよ……」 「そうだ、この一万円でさ、今から5人で焼肉行こうぜ!!」 ケンジが一万円を掲げて、そんなことを言った。 「一億円の焼肉かあ」 「なんかすっごい贅沢みたいだね」 「でも、5人で一万じゃ足りねえだろ」 「私、友達がバイトしてるところ知ってるから、安くしてもらえるよ」 「いいねえ、じゃあ、決定!! 一億円で焼肉だ!!」 夕陽に照らされた土手の道。 並んで歩く、5人の男女の賑やかな声が響く。 青春は いつだって不安定で脆く たった一言で動き出し すぐに転がり誰にも止められなくなり 暴れ出し そして、当人たちの思わぬところへ着地する だからこそ青春は 辛く、苦しく 嬉しく、楽しく そして最高に、面白い。
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