第2章 上弦の月②

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「世間知らずの姫様でも分かる易い、簡単な話です。  現在、関ヶ原の戦いでは……  どんな手を使ってでも、  豊田軍に勝ちたい徳田殿から、我ら神門軍に、  “援軍になって欲しい”と、  申して来たのです。  私は、徳田殿には“天満姫さまを、  信久の元に嫁がせる”と、言う条件で、  徳田殿に返事をしました。  そして、徳田殿は“承知した”と、  返事を頂きました」 天満姫はまた、動揺する。 「叔父上さまが・・・!」 雅雄は天満姫の耳元で、 「ですが・・・天満姫さま、  あなたは信久の元に嫁ぐ事を、  “嫌だ”とおっしゃるなら、  我らは無理とは言いません・・・ですが、 神門軍は・・・徳田軍の援軍には成らず、  豊田軍の援軍になります」と、耳打ちをした。 それを聞いた天満姫は驚きで、 全身の力が抜け、地面に膝を付ける。 「えっ・・・!」 雅雄は楽しそうな声で、 もう一度天満姫の耳元でささやく。 「さぁ・・・お選び下さい。  あなたが、幼子から可愛がってくれていた 叔父上が生きるのも、死ぬのも・・・  あなたの判断次第ですよ」 天満姫は自身の頭が、狂いそうな絶望の中で、 今にも泣き出そうな声で言う。
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