7、追いかけっこ、アンド犬

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 七尾の舌や、背中の味を知っている。涙、汗、精液をすすった。手を強く握ると、その指は硬く、骨ばっていてひやりとしている。手首は乱暴に扱うと、折れてしまいそうに細い。背はそれほど低くないのに、その身体を抱くと腕の中にすっぽり収まる。ペニスはやや細く、色が淡いせいで、ひょっとして誰にも触れられたことがないのではないのか、という勘違いをしそうになる。いたいけにすら思えるそれを、両手で包み込むと、熱く息づく。すべすべしたそれを刺激し続けると、強気な人は、困ったように目を伏せる。もっとそんな顔が見たい、困惑させたいと、奥に指を忍ばせたらますますひるむ。体内に指を入れると、狭くて熱くて、それでいて溶けそうで。ぐっと中をこすると、泣きそうな顔になって、抑えられなくなった声が……。 「洋祐」  七尾の声で、ようやく現実に戻った。  さっきまでうるさいほど盛り上がっていたのに、誰一人会話をしておらず、全員が森谷を見ていた。  完全にトリップしていた。  そういえば、誰かから「森谷くん」と何度も呼ばれたような気はしていた。 「洋祐、今日の午後、予定ある?」  七尾が落ち着いた声で聞いてきた。自然な笑みを浮かべており、森谷と目があっても全くひるんでいなかった。  今回も二人の間のあれやこれやに関して、フルスイングで無視。今に始まったことではないのに、傷つく。  それでも、皆の手前、親しげに下の名前を呼ばれ、嬉しさがこみあげてくる。ほぼマゾだ。  口を開きかけると「予定なんてあるわけないか」と、七尾がカラッとした口調で言った。  そしてヤンミさんに、「ヤンミさん、森谷、いいですよ」と告げる。  ヤンミさんは、「それじゃあ後で声かけるね」と森谷に言った。  また売られた。どうせそんなことだろうと思った。  食事の片付けが終わると、ほとんどの人々がガレージに移動して行った。  ガレージでは、大西が学生たちに、午後の作業の指示をしていた。  学生たちが熱心にメモをとる中、七尾は一番後ろで、ケガした足を投げ出して、壁にもたれ床に座っている。膝に置いたPCに向かって何か作業している。こちらをチラとも見ない。  森谷以外、みんな仕事モードで、とてもじゃないが話しかけられなかった。
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