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「翠、日本語うまくなったね。」
乃蒼がいきなり突拍子もないことを言うので翠はえ?と聞き返した。
「翠が僕に日本語を教えてって言ったのはいつだったかな?
確か、10年前・・・だよね?」
乃蒼が続ける。
翠は乃蒼の言葉にハッとした。
「10年前・・・。」
翠はまたうつむくと、記憶をたどり始めた。。
10年前、どうして自分は日本語を話そうと思ったのか。
父のたまにつぶやく言葉の意味を知りたかったからか。
それとも、いつか聞いた母に会いに行くためか。
いや、違う。
もっと別の何か・・・。
記憶を順番にたどっていくとそれはある一点にきたときに止まった。
翠は勢いよく顔を上げ、乃蒼を見た。
乃蒼は笑っていた。
「行っておいで。」
翠はその言葉に後押しされるようにすっと立ち上がり、走り出した。
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