依頼人

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依頼人

この文章を読んで、不思議に思ったこと。 まあ、たくさんあるのだが。 「ジュースがおいしかった」 これって、それを予測して書いたのか、実際、 飲んだあとに記したのか。 当然、前者だろう。 (依頼人か、誰だろう) (依頼人が欲するもの、ってなんだ?) わかるはずもないことだ。 (そのうち、わかるだろう) ナタリーがいない。 トイレかな? 私から離れる時は、それ以外は考えられないほど一緒にいる。 ナタリーが帰ってきた。 なにやら、口にくわえている。 遊んでもらいたい時は、ボールなどを持ってくるのだが、 珍しいことに、広告のようなものだった。 「なんだ、ナタリー」 お座りをして、広告を咥えたままのポーズで、私を待った。 「これ、見ればいいのか?」 私は、手に取った。 不動産屋のチラシだった。 (家はあるからいらないのだか…) よくよくみてみると、キズの付いている物件がある。 (ナタリーが引っかいたのか?珍しいな) ナタリーは噛み癖もなく、もちろん引っかいたりもしない、 かなりおとなしい犬だ。 その、キズが付いた物件を見てみると、 「これ以上ないお買い得物件!!       今を逃すと手に入らない!!」 (お約束のセリフだな) 「広いお庭でペットも満足!!」 「なにぃー!!」 この時、私はピン!と来た。 依頼人は、ナタリーか! そしてあの少女。 ナタリーと雰囲気が瓜二つだった。 (見たことがあるはずだな) 私は、じっと、ナタリーを見つめた。 (この挙動不審さはいつも通りだ。    そして、やっぱりあの子に似ている) 驚きもしたが、事実なのだろう。 「そうか!広い庭が欲しいんだな? 今すぐに見に行こう!ナタリー!」 私は広告を持って、ナタリーと一緒に、 この不動産屋を訪ねることにした。 ナタリーは、いつもよりも高く飛び跳ねるように、 私をせかした。
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