第1章

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ネットの世界は今日も平和である。 ネットの世界でさえも話のネタになる『夜明け』に関してのページは数え切れないほどある。 そんな幻のギルドのギルマスが 「…、シンジ……飯、食ったか?」 「アルバ」 飼い犬…もとい、狼に心配までされているこの俺なわけで。 確かに、魔王倒して、最強のギルドで、最凶のメンバーで、最高の冒険をしてきたと自負しているが。 『働いたら負けかなと思ってる』 このただっぴろい家でただ1つ彼が生活する場所こそがこの自室である。その他の数多くの部屋はというと 「その顔は食ってないな。……どうするつもりだ?」 この言葉を話す狼のものであると言ってもいい。 なんといってもこの家の持ち主であるはずの彼は 「別になんでもいいさ」 驚くほど怠惰であったから仕方がない。 元勇者である彼の名前はシンジ。今では勇者であった昔の影などまったく感じることのないスエット姿。死んだ魚の目をしている。 この言葉を話す巨大な狼、アルバはシンジの飼い狼である。魔王を倒す旅の途中、エリアFの小さな町の守り神として社にすんでいたのがこのアルバだ。 町民から守り神として祀られていたため、モンスターであるにも関わらず無償で餌を得ることが出来ていた。 また、神として祀られていたせいで当時は今よりもっと態度が大きく傲慢な狼であった。 「なんでもよくはないだろ」 気がつけばこの怠惰な主に仕えてから態度が大きいのは変わらないが、面倒見の良い性格になっていた。 パソコンの前に体育座りをしているヒューマンの隣で、2mはゆうに超える狼が座っている異様な光景。 そんな光景ですら、彼らにとっては日常である。
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