Aランクの依頼

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周囲を見回しながら慌てたように言う男に、ダムドの声がする。 「今の事は完全に聞かせて貰った。悪いが報告をさせて貰う。お前は魔法使い失格だ」 ダムドの言葉に、男は慌てる。 「な!誰なんだ!何処に居る!お前か!」 男は僕に武器を向けると、怒って怒鳴りつけて来た。 僕に向かって振り下ろされた剣は僕が張ったシールドに弾かれる。 「何をするんだ!」 怒鳴り声を上げるジェム。 「エルに何してんだよ!」 大きな声で怒鳴り剣を持った男の腹を何と殴りつけたシリル。 「ぐあ!」 いきなり殴りつけられて、直ぐそばの洞窟の壁に叩きつけられた男。 腹を抑えて呻きながらシリルを睨みつけて男は言った。 「クソ!この。ガキの癖に、俺に攻撃だと?絶対に許さねえ!クソガキ共が!お前らを全員ぶっ殺して、事故として報告しといてやるよ!死んで反省しろ!」 そう言って殺気を放ちながら、魔力を膨れ上がらせる男は、魔法を放つ。 「風弾!風破!風衝!」 さっきまでとは、段違いの魔法の練り上げと発動。 どうやら、怒りで我を忘れている分、集中力が増したのかな? よく出来た魔法が僕達全員に襲いかかって来る。 悲鳴を上げたのはジェムとシリル。バーンは、ニヤニヤと笑いながら言った。 「馬鹿だねえ。相手が悪すぎらあ」 呆れたように言うバーンの、言葉通りに僕は、魔力球で全てを相殺させる。 皆の目には、目の前で次々に魔法が消えてしまったように見えただろうね。 「な!何だ!何が起きた!」 愕然とした様子で怒鳴る男。 僕は右横に魔法陣を素早く展開すると、召喚する。 そこには不機嫌な表情で両腕を組んで男を睨みつけるダムドが居た。 「全く。馬鹿が面倒な事しやがって!迷惑だ!」 そう言った瞬間。 男に強烈な雷が落ちた。 洞窟の中なのに! 男は煙を上げながら地面に倒れた。 僕は煙を洞窟の外に流しながら言った。 「先生!こんな洞窟であんな魔法を使わないでくださいよ」 ダムドは、不機嫌な表情のままに、男に歩み寄って襟首を掴むと言った。 「俺様の仕事を増やすからだ。さっさと逆召喚しろ。こいつを処分する」 僕は溜息をついて再び魔法陣を展開して、ダムドを送還する。 静かになったその場所に、沈黙が訪れた。 暫く黙った後で、シリルが言った。 「なあ?エルって、本当にAランクか?」 首を傾げるように言うシリルに頷くジェム。
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