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祖父は亡くなる前に病室で一人の男を僕に会わせた。
その男は弁護士だった。祖父の遺産相続について話を聞かされた。
法定相続人は母と僕の2名だけだった。母の再婚相手に知られないよう生前贈与を少しずつ進め、残るは僕だけだと教えられた。
祖父は隠居後、海外旅行へ度々行っていたのと僕らの勧めで自分のために使うようにしていたため、目が飛び出るような額の遺産は残っていなかった。
当然、遺産をもらっても会社勤めは必須だ。手元にやってきたのは相続税を払うと1000万円足らずだった。
祖父は体調のいい時に外泊の許可を申し出て僕に内緒で託したものがあった。
純金バー1KGと謎の鍵。
金のバーは所謂脱税行為だった。
「保険みたいなものだ。いよいよ困ったら使いなさい。
そのうちもう少しやるから。」
そう言って新聞紙に包まれた金のバーを僕のカバンに突っ込んだ。鍵については貸金庫だとニヤリと笑うだけでどこのものだと教えてくれなかった。
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