第14話

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「江茉。聞いて」 「やだっ」 苦しげに吐いた涙声に胸が痛む。 「おじさんもおばさんももうあそこにはいないよ。勿論ウメさんもいない。誰もいないんだ」 彼女の顔を胸に押し付け、耳元で優しく話す。 「でも」 「だから、行かないで」 「約束したから」 腕の中から縋るように見つめているのは、すぐ側にいる俺ではなく 「早く帰るって、お父さんとお母さんと約束したから」 廃墟と化した、愛しき記憶。
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