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「じゃあ、こっちに」
「あ。あの、神崎さん」
身体を回すも、彼女に背中を向けた瞬間に呼び止められ、振り向く。
「なに?」
「神崎さんの婚約者……って、江茉さん。ですよね?」
先程遮った言葉を繰り返す飯山さんは、首を傾げて俺を見上げていた。
そういえば雛森が部長の奥さんに襲われた時、彼女達の前で、雛森が『婚約者』だと宣言していた。
固く口止めをしていたので訂正も補足もせず今日まできたが、週末の夜の件で疑問が湧いてきたんだろう。
が、
「飯山さんは何も知らない方がいいよ」
あまり余計な詮索はされたくない。
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