第14話

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――誤算だった。 「じゃあそういうことで。悪かったね」 申し訳なさそうな声だけを残し、軽く手を上げて奥に消える院長に頭を下げ、その背中を見送った。 『手が空いたら呼ぶから』 外来が落ち着くまで待ってて。 そう言われ、待合室で何時間待ったことか。 途中で落ち着くと予想した患者は最後まで途切れることはなく、結局午前の診察が終わるまで待たされるハメになった。 暇つぶしに目を通す資料も手帳も内容なんて頭に入ってこない。 腕時計を10分おきに見ながら、『まだか?』と溜め息を吐くばかり。 病院側の都合で振り回されることが多いこの仕事。待たされることに慣れてはいるが、さすがにこの日だけは溜め息の数が多かった気がした。
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