第14話

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「……」 ハンドルを握り、車を発進させる。 どんよりと重い雲。灰色の空。 いつの間にかフロントガラスが濡れていた。 ワイパーをかけ、それを払う。 目の前をしっとりと濡らす霧雨。 本降りにならないといいけど。 そんな心配とともに、雛森の身を案じた。 余程のことがないと彼女はあの場所に戻らない。 そう思っていたから。 今、どうしているんだろう。 今、何を考えているんだろう。 思いを巡らせては溜め息を吐き、灰色の空を見上げる。 何事もあっては欲しくない。 彼女の肌に、髪に触れた感触を思い出し、ハンドルを握る手に力を込めた。
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