第14話

23/37
前へ
/37ページ
次へ
…――バタン。 と、車のドアを閉める音が辺りに響く。 車も人も殆ど通らない道だから、少しの間路駐したって心配はない。 「……」 傘をさし、霧雨の中を歩いた。 覗いても向こう側が見えない錆びた鉄の門。 蔦が絡まり、開けられた気配はない。 中を伺うことはできず、アスファルトが剥がれた歩道を、ボロボロの塀に沿って歩いた。 視線を落とせば、所々から顔を覗かせる雑草。 長い間手入れされていなかったことは一目瞭然だった。 「……」 ある場所で立ち止まり、そこを見つめる。 塀の下。長く伸びた雑草。 掻き分けた跡。 人が通った、気配。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2386人が本棚に入れています
本棚に追加