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しゃがみ込むと、土が湿る匂いがした。
「……」
なんとか通れるか。
さしていた傘を閉じて穴の向こう側へ投げ、続けて自分の身体を通していった。
あの頃難なく通れた穴は、今では腹ばいになってやっと通れる程。
それだけ月日が過ぎたということだろう。
穴を抜けて立ち上がり、スーツに付いた汚れを払うと、目の前に広がる朽ちた景色に眉を潜めた。
懐かしい筈のその景色。
今ではもう、その姿を残すだけで、昔の面影なんてないに等しかった。
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