第14話

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しゃがみ込むと、土が湿る匂いがした。 「……」 なんとか通れるか。 さしていた傘を閉じて穴の向こう側へ投げ、続けて自分の身体を通していった。 あの頃難なく通れた穴は、今では腹ばいになってやっと通れる程。 それだけ月日が過ぎたということだろう。 穴を抜けて立ち上がり、スーツに付いた汚れを払うと、目の前に広がる朽ちた景色に眉を潜めた。 懐かしい筈のその景色。 今ではもう、その姿を残すだけで、昔の面影なんてないに等しかった。
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