第14話

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「……」 先程投げた傘を拾い上げ、辺りを見渡す。 雛森の姿はない。 ここにいる筈なのに…… 灰色の空を蝕むように枝を伸ばす金木犀。 その横を歩き、地面を這うクローバーの群れの中に足を踏み入れた。 湿った草の感触。 霧雨は地面に生えた緑に雫を作り、その雫が歩く俺の足を濡らす。 聞こえているようで聞こえない雨の音。 聞こえるのは、濡れた草むらを歩く足音だけ。
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