1 日常

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心羽が言う、彼女が自分と出会った日。 その日付まで遡るようにじっと心羽を見つめる大虎に、心羽はふっと息を洩らす。 「大虎が、私に傘を貸してくれた日」 まだ途中までしか遡っていない記憶を飛び越えて、その日を鮮明に思い出した。 それまで上から見ていた以上に目の前にした心羽は小さく華奢で、揺れる前髪に意識が奪われた事。 後ろからかかった声は胸に響き、自然に口元が緩んだ事。 今その声が自分の名前を呼び、その体が自分の腕の中に居る。 じっと見下ろして、一度あらわになったおでこにキスを落とした。 「今日だったか」 「うん、今日だったの」 「……悪い、気付かなかった」 「ううん」 「あー……なんか用意すればよかった」 「ふふっ、カレー用意してくれたっていうのがいいよ」 「……っ、」 「それに、」 「うん?」 「大虎がこうしているんだから」 緩く微笑む心羽の、頭を撫で、頬を撫で、自分の頬へ伸びた手を握る。 そして大虎はこわれものを扱うように、そっと心羽を抱きしめた。 「コレが一番いい」 心羽がうっとりと呟いた。 素肌が触れ合い、お互いがぬくもりを与えあう。 大虎は心羽の耳元で愛を囁くとその腕に力を入れた。
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