1 日常

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「ふぁぁぁあぁ、」 室内に全く遠慮の知らない欠伸の声が広がった。 声の原因はグッと大きく伸びをすると、今度はだらりと腰掛けたままのソファへ身を沈める。 この部屋にあるのはテーブルと、それを挟むように置かれた2人掛けソファ2台に、反対の対で一人掛けのが2台。 そして奥の壁のほとんどがガラス張りの、それを背負うように存在感のあるデスク。 付随する座り心地のよさそうな、革張りのイス。 そこに腰掛けていた男は、ソファに身を預ける男の事はちらりとも見ず、立ち上るとガラス張りのそこから下に視線を送った。 「……トラちゃーん。完全にその日課、癖になってるよね」 「…………、」 ゆっくり振り返った“トラちゃん”こと、柴崎大虎は信じられないというように片眉を持ち上げた。 それからゆっくり靴音を鳴らしながらソファまで来ると、だらけ切った男、ライトの向かいにどさりと座る。 そうして。 「……なにがだ」 しらじらしくもそう言って、胸ポケットから煙草を取り出すと口にくわえた。
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