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そんな中、
「うぐっ…」
「…ふぇっ」
雰囲気をぶち壊す声が二つ、後ろから聞こえてきた。
怪訝な顔で振り向くと、全く同じ表情をした美男美女カップル。
小野寺と堀が、瞳に一杯の涙を溜め、必死に泣くまいと、しかめっ面で唇を噛みしめ震えていた。
「ブハッ!!」
余りの間抜け面に、我慢しきれず吹き出す。
「お前ら、なんて顔してんだよ!アハハハハ!」
「ひ、ひどっ…!」
「か、かちょぉぉ…」
指差して笑うと、堀は涙を拭いながら眉を吊り上げ、小野寺は情けない声で泣き出した。
場の空気は、どっと爆笑の渦へと変わる。
森園も思いっきり笑っていた。
そっくりな父子と一緒に。
その姿を見て、漸く終わったと思った。
彼女を好きになったのは、もう随分前だ。
とうに振られたというのに、積み重なった想いを女々しく捨てきれず、片思いが癖の様になっていた。
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