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「アホか。相手もいねーのに有り得ないだろ」
嬉々とした表情で現実味のないことをいう堀に呆れた視線を投げる。
「そんなことわからないじゃないですか!運命の相手にどこかでばったり出会うかもしれないでしょ」
「アハハ!ないない」
ヒラヒラと手を振って、笑い飛ばす。
すでに恋愛に見切りをつけた俺には、本当に夢物語だ。
「もう!課長には幸せになって貰わなくちゃ、私達困ります!」
「何だ、それ」
「だって、私達の今があるのは、課長のお陰ですもん!」
小野寺と付き合うきっかけを作ったのは俺だから、恩義を感じての言葉だろう。
手元に視線を落とせば、白い封筒に二人の名前。
堀にとって、今が幸せの絶頂期。
しかし…だからと言って、俺の幸せを同じ括りで考えるのは勘弁してほしい。
一度失敗した身だから、結婚の難しさは嫌というほど身に染みている。
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