8

15/40
前へ
/273ページ
次へ
いや、お父さんじゃねーし、それ、俺がしてもいいわけ? 躊躇っていると、更なるプレッシャーをかけてきた。 「安心させてやらんかね!ほら!ほら!」 「あ、ああ…はい」 九州訛りの強い押しに負け、こわごわと二人を腕の中に閉じ込めた。 すると、待ってたかのように、しーちゃんはさらに小さく身を寄せてくる。 その反応にこれは正解だったのだとほっとしたが、同時に胸の奥をぎゅっと掴まれた感覚が訪れた。 マズい…… 瞬時に脳裏に過ったのは、この言葉だった。 何が『マズい』のか、それさえ考えちゃいけない。 気づきたくないものに気づきそうになった時、パンパンと背中をたたかれ、ドツボに嵌りそうな思考が遮断された。 さっきのばあちゃんが『よくやった』という労いで叩いのだ。 満足げな笑顔がそれを物語っている。 助かった。 絶妙な邪魔をしてくれたおかげで、冷静さを取り戻してゆく。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11834人が本棚に入れています
本棚に追加