8

21/40
前へ
/273ページ
次へ
「渚、わざとか?」 「ああでもしなきゃ、買い物がすすまないもん」 「お前、策士だな」 「さくし?」 「賢いってことさ」 「ふーん…まあ、いいや。とりあえず、今のうちにレジしたほうがいいんじゃない?そうしないと、しーちゃんとまたもめちゃうよ」 「フフン…さすが策士」 「それ、褒めてんの?」 「褒めてる。褒めてる」 訝し気に俺を見上げる渚の頭をわしゃわしゃ撫でてやると、「またぁ」と口を尖らせながら、渚は跳ねている髪を手櫛で整える。 俺の小さな友人は、落ち込んでばかりではいられないと、すでに頭を切り替えたようだ。 素直で逞しい。いいことだ。 「よし!しーちゃんのいない間にさっさと済ませよう」 ニッと笑えば、渚も同じように右の口端を上げて応えた。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11834人が本棚に入れています
本棚に追加