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俺は改めて梅さんをまっすぐに見つめ、訴えた。 「私情を持ち込んでいるのは承知の上です。だけど、彼女は梅さんの厳しい指導でも受け入れますよ」 「なぜ、そう言い切れるんだい」 「彼女は……亡くなったお姉さんの息子を一人で育てています。そのためには、どんなに過酷な状況でも耐えようとする。誰にも頼ろうとせず、自分を追い込んで。実際、前の職場はそうでしたしね……」 梅さんの眉間の皺がさらに深くなる。 俺はフーッと長い溜息を吐き、膝の上に置いた手を握りしめた。 「俺は、その男の子と友達なんですよ。俺の小さな友達は、彼女の重荷になっていると自分を責めている。まだ小学2年生の子どもが…… だから、少しでも心を軽くしてやりたいんです。彼女も、俺の友達も。だから、梅さん、協力してくれませんか? お願いします!」 正直な気持ちを吐露し、頭を下げた。 梅さんは腕組みをしたまま目を瞑り沈黙したまま、微動だにしない。
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