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「おめでとうございます!」
「…ありがとう」
祝いの言葉に、ちょっと照れくさそうに頬を染め、微笑む彼女。
隣には、切れ長の目を細め、愛おしそうに彼女を見つめる男と、そいつに瓜二つな小さな男の子。
幸せな構図が目の前で繰り広げられている。
今日は、俺が長年片思いしていた彼女の入籍の祝福会。
馴染みのダイニングバーを貸し切って、仲間内だけの小さな祝いの席。
彼女を慕う部下の堀が企画した。
何年ぶりだろう。
彼女に会ったのは。
ぼんやりと堀と談笑する彼女を見ていた。
「…課長」
窺うように俺に声を掛けてきたのは、元部下の小野寺。
「おう…サンキュ」
なんとか笑顔を繕って、彼からグラスを受け取ると、引き攣った笑顔で応えてきた。
小野寺は俺の気持ちを知っていたから、気遣っているのだろう。
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