もう一つのプロローグ

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「凛、おいで…」 森園が子供に声をかけると、精一杯手を伸ばし、父親の肩から母の腕の中へ。 「ママも、だーいすきぃー」 森園の首に手を回し、ギュッと抱きつく。 「ママも…大好きだよ…凛、ありがとう…」 柔らかそうな我が子の髪に顔を埋め、母親は肩を震わせた。 そして、二人の頭をポンポンと優しく撫で、父親が長い腕で二人とも包み込んだ。 彼女が息子へと贈った『ありがとう』には、きっと様々な想いが込められているだろう。 3年間、母一人、子一人。 そこへ突然現れた父。 今までを受け止め、今からを受け入れるまで、子供なりに戸惑いや葛藤が少なからずあったはずだ。 しかし、今、凛は笑っている。 曇り一つない輝きを放って。 親子3人となって、まだ数ヶ月。 だけど…3人は、もう既に家族だ。 微笑ましい親子の姿をを囲んで、温かな空気が充満する。
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