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眉間に深い皺を刻み、「フン」と鼻をならした梅さんに、堀は緊張な面持ちでぐっと唇を引き締め背筋を伸ばした。 「……このこ、どっから見つけてきたんだい」 頬杖をついた梅さんは、履歴書をにらめっこでもしてるかのように凝視している。 履歴書には『遠藤汐里』と氏名欄に記入されている。 そう、梅さんが手にしているのは、しーちゃんの履歴書だ。 この履歴書をみて、彼女の名前の漢字を知った。 俺は、名前の漢字さえろくに知らない子を自分の会社へ入れようとしている、 なんとも奇妙なものである。 しかし、のんきなことは言ってられない。 ブラック会社ともなんとか折り合いつき退職の目途がたったので、彼女の再就職先をなんとしても確保しないといけないのだ。 そのためには、目の前の門番を納得させる必要がある。 「うーん…課長の知り合い?って言っていいんですかね?」 堀が首をかしげながら、俺を窺いみる。 確かに、俺としーちゃんの関係は、なんと言い表したらよいものか。 「まあ、俺のご近所さんかな」 さすがに今、一緒に住んでますとは言えない。
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