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職場でもそうだ。
僕の席の背後に並ぶキャビネットを、右から左へバッタンバッタン開閉しながら、誰かが何かを探している。
明らかに急いてる様子で、必死さが伝わってくる。
僕は内心「声をかけて手伝うべきだ」と思う。
周りの仲間達もきっと、一番近くにいる僕が率先して手伝えばいいと感じているのだ。
でも、考える。
もしも声をかけて、「あ、別に自分で探せるから」と断られたらどうしよう。
それとも、僕の知らない書類を探していたらどうしよう。
お節介者だと思われたり、無知だと思われたり、声をかけたことによって僕のイメージが落ちたらどうしよう。
かといって、声をかけないことで周囲に冷たい人間だと思われる可能性もある。
電車の中でもオフィスでも、こんな逡巡のせいで何も出来ず、結果『気の利かない奴』という位置にいるのだ。
自分を変えなきゃ。
最近はよく、そう思う。
自分自身が『こうしたい』と感じたことを、真っ直ぐに実行しよう。
周りの視線なんか気にしない。
周りがどう思うかなんて関係ない。
僕が客観的に思う【こうすべき事】は、一般的なデータを元にして作り上げた、他人目線の【良い人の行い】だ。
時と場合と相手によっては、イレギュラーだってあり得るわけで。
僕自身の直感を信じて、左右も後ろも振り返らず進むべし。
……そんな風に決意していた時のこと。
僕は、落とし物を拾った。
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