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「…ん」
私は気がついたらお嬢様が寝るような天蓋付きベットで寝ていた。
…なんでここにいるんだっけ?
眠たい頭を無理やり覚醒させ私は起き上がった。
私が寝ている部屋の中は香水や服が並べてあり、いかにも女子の部屋というような感じだった。
…なぜか場違いな釣竿が置かれているが。
辺りには柑橘系なのか、爽やかな匂いが漂っていた。
それらを見ながら昨日のことを考えていると、辺りの光景と昨日のことがリンクした。
そうだ、私は昨日この世界に泊めてもらったんだ。セッカラムでの注意事項を色々シオンとサクラに聞かされてから、この部屋に案内された。
この部屋はシオンとサクラではなく、別の神竜の部屋らしい。
今ちょうど留守にしていたので私がここで寝れた、というわけだ。
そういえば、お腹減ったな…
そう思っていると、
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえ、続いて、
「アネモネ様ー?起きましたか?」
サクラの優しい声が聞こえてきた。
「ああ、起きたぞ」
そう返すと、
「失礼します」
とサクラがしずしずと部屋に入ってきた。
「昨日はよく眠れましたか?」
「ああ。このベットはとても柔らかいな。とても気持ち良かったぞ」
「それはそれは。アネモネ様が喜んでくれてなによりです」
サクラはそう言って微笑む。
作り笑いのような笑顔ではなく、本物の光輝くような笑顔だ。
…神竜に男がいるのなら、絶対に相手がいるのだろう。
「それにしても、サクラはどうしてそんな言葉遣いなんだ?様とかつけなくていいのに」
「…ああ、これは癖のようなものなのですよ」
見間違いか、サクラの瞳に少し影がさしたような気がした。
「私に様とかつけるとなんか変な感じがするから、様つけなくていいぞ」
「わかりました。アネモネと呼びますね…ふふっ」
突然サクラがクスリと笑った。
「どうしたんだ?」
「いえ、私シオン以外を呼び捨てにしたことが無くて。…呼び捨てって案外気持ちのいいものですね」
「そうか、なら良かったよ」
その時、ちょうど私のお腹が鳴ってしまい、私達はぷっと吹き出し、顔を見合わせて笑いあった。
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